昨年お亡くなりになった堺屋太一さんが、日本が安全立国であることを指して「あまり極端に安全よりになるのも危険だ。」というようなことを、確か経済教室に書いていたように記憶している。新幹線が数分遅れただけで”事故扱い”になることを。逆に危険だ、とおっしゃっていた。そして高い安全神話のために大量の人員が動員される。

堺屋太一

なるほど、会社の中を見回しても仕事のための仕事をしている無駄な人がいかに多いことか?

日経の春秋に書かれた記事は真実を貫いている。

春秋 2020/5/12付

われわれの文明は、印刷された書式の魔力にとらわれている」。「マネジメントの発明者」といわれるピーター・ドラッカー氏は、主著の「現代の経営」(上田惇生(あつお)訳)でこう書いている。文書の定型な書き方を規範とみなし、柔軟さがうせる様子を批判したものだ。

▼よくある間違いは、報告や手続きを上からの管理の道具に使うことだとも指摘している。工場長は自らの仕事には必要のない情報も集めて本社に知らせるようになる。現場の社員が報告書の作成に時間をとられ、本来の仕事がおろそかになった保険会社の例も挙げている。無益な作業が組織全体で増殖していく愚かしさだ。

▼緊急経済対策に盛られた給付金や助成金も、厳正な管理をめざすあまり、手続きがいたずらに煩雑になっていないか。極め付きは従業員に休業手当を支払う企業への雇用調整助成金だ。書類に記載する項目が73もあった。減らした後も38にのぼる。経営者は申請に費やす時間を新規事業の思案にでも使いたいところだろう。

▼手続きが「アマゾンのジャングル」のようにはびこっていた組織が、窒息しそうな状況を打開した例をドラッカー氏は紹介している。あらゆる報告を2カ月廃止し、どうしても必要なものだけ復活させることにした。すると報告の4分の3は不要だったという。「現代の経営」は刊行から60年以上たつ。今なお示唆に富む。

ドラッカー

ひとつミスが出る。ふたつミスが出る。ミスが出るたびに穴をほじくりだすような作業に人員を増やしてコストがかさむ。

しかしである。

その無駄な仕事のおかげて雇用が守られている、という現実もあるわけだから、注意が必要だ。堺屋太一さんのいうように、極端に振れることに逆の危険があることを知るべきだ。何事にも作用と反作用がある。作用と反作用のぎりぎりのラインを見極める慧眼が求められるのだ。
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