佐伯泰英さんの本を初めて読んだ。
たまたま書店で手にして買ったら、その日に発売された本であった。
2019年4月に書かれて、同年6月20日光文社文庫から初版。

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吉原裏同心抄。主人公の神守幹次郎は妻汀女と長く流浪の旅を続け、流れ着いた吉原で同心として活躍することとなる。
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吉原には7人の名主がいて、ここでは冒頭から七代目頭取から跡継ぎ話から始まる。

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長く続いたシリーズのようで、八代目頭取に裏同心の神守幹次郎が推薦されるが強い反対意見がありまとまらない。話し合いが紛糾する折、神守幹次郎に刺客が次々と現れ、複数の罠が仕掛けられる。

これまでの経緯を推測しながら読まねばならないので、神守幹次郎の人となり、そして周囲を固める人物設定など、丁寧に読まないとわかりにくい。

吉原の環境については、先日読んだ『恋牡丹』(戸田義長著)にも出てきて、これまでぼんやりとしか知らなかった吉原の実情が伝わる。この作品ではより詳しく書かれていて、当時の吉原の街並みや江戸の地図などが紹介されていて興味をそそる。

時は寛政年間。松平定信による寛政の改革で幕府の緊縮策が吉原にも押し寄せる。

頭取の跡目をめぐる争いに、吉原の社会が映され、当時の背景を知ることができる。吉原が国家事業であることを思えば、ジブリ作品の湯屋などもこのエリアの話であることが想像できる。

神守幹次郎の剣術の腕と才覚で、跡目争いは不思議な方向へ展開して終わり、このシリーズが場所を代えて続くことを示唆する。きっと最初から読むともっとわかりやすくて面白いだろう。

春淡し 吉原裏同心抄(六) (光文社文庫) [ 佐伯泰英 ]
春淡し 吉原裏同心抄(六) (光文社文庫) [ 佐伯泰英 ]



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