たまたま本屋で見かけて衝動買いした。
「父親が娘に語る経済の話」 (Talking to My Daughter about Economy)
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著者はギシリャの財務大臣を務めたヤニス・バルファキス。ダイヤモンド社から2019年3月に初版が出された。今では世界25か国で翻訳が出されているらしい。


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ギリシャといえば深刻な金融危機に見舞われユーロ圏から離脱させられるのではないかとまで言われていた。

この本は極めて平易にわかりやすく書いてある経済の本なのだが、実は過去の様々な学術書ではなく小説や神話や映画などからの引用を用いて説明しているところが画期的だ。

冒頭、娘から著者への質問で「なぜこんなに格差があるの?」という問いに答える形式で物語は進む。

前半は古代からの経済の成り立ち。農耕社会が将来への備えとして「余剰」を生み出すことで、信用取引が始まり、それに合わせて国家と宗教が派生したということを書いている。

人間は自分が何かを持っていると、それを当然の権利だと思ってしまう。

ここから市場社会が誕生し、交換価値が経験価値を打ち負かすことで労働市場が生まれ、ここから富と貧困の隔たりが生じてきた。余剰に変わって人が利益を追求するようになったというのだ。これらの流通に銀行が関与し、中央銀行という存在に政治がかかわりだして国債という制度で信用を未来への投資であると導いてきた。日本などは赤字国債を発行してから未来への転落が始まっているのだ。

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ここで著者はゲーテの「ファウスト」やディケンズの「クリスマス・キャロル」、スタインベックの「怒りの葡萄」などをたとえに価格の変動
や貧富の格差などを掘り起こす。

第5章ではルソーの「狩人のジレンマ」をたとえに”全員で鹿を狙うか、ひとりで子ウサギを狙うか”というジレンマに人が疑心暗鬼の中で信用を維持する仕組みを示したり、「オイディプス王」の予言の力について示したりして興味をそそる。

最も興奮するのは第6章だ。映画好きにはたまらない展開で「フランケンシュタイン」「ブレードランナー」「ターミネーター」「マトリックス」「モダン・タイムス」などなどが紹介され、最後にマルクスの「機械が人間に服従を強いる」という言葉を立証している。

我々はインターネットの普及に伴い、誰もがコンピューターを手にすることで仕事がはかどると錯覚しているが、これはまさにマルクスの言う通りとなっている。人が機械のために働いているのだ。

ケインズの貨幣に対するコメントも紹介されていて、その知性には止めどがなく、多少なりとも経済学をかじった者ならば大いに興味深い内容である。

著者は、全ての経済行動には表と裏、明と暗があり、どちらかがどちらかに作用することで反作用が生まれることを示しつつも「自分の意思ではないものい操られるのだけは嫌だ」と娘に向かって断言する。そしてたとえとしてショッピングモールやマスコミがその類であり、その中に経済学も含まれる、と暗示している。ここが実に倫理的である。

悪貨が良貨を駆逐する

という経済用語のたとえはビットコインの普及と破たんで説明できる。

読めば読むほどに知性をくすぐる面白い本だった。


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ライオンズはジャイアンツに負けた。
なかなかテレビ中継を見ることができない名古屋だが、三重テレビ系でたまたま観戦できた。

やはり投手陣がイマイチだ。十亀投手はなんとか立ち直ったが、森脇投手が試合を壊してしまった印象だ。

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