連休がやっと終わった。
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野口悠紀雄先生の著書。整理術の大家。日経ビジネス人文庫から2019年4月発刊。(2015年6月東洋経済で出された著書の再版)
われわれはいま、どこにいるのか?
と聞くとゴーギャン(われわれはどこから来たのか われわれは何者われわれはどこへ行くのか)をなぞる。
野口先生の東京大空襲の記憶から大蔵省勤務(この著書の中で、この時代のことが最も生き生き描かれている。)を経て、アカデミックな仕事に至るまで、ご本人の歴史と、日本経済史を並べてリアルに現代を読み解く。「どこで間違えたのか?」という問いは、現在の自分たちと将来に亘る懸念の解にもなっている。
と聞くとゴーギャン(われわれはどこから来たのか われわれは何者われわれはどこへ行くのか)をなぞる。
野口先生の東京大空襲の記憶から大蔵省勤務(この著書の中で、この時代のことが最も生き生き描かれている。)を経て、アカデミックな仕事に至るまで、ご本人の歴史と、日本経済史を並べてリアルに現代を読み解く。「どこで間違えたのか?」という問いは、現在の自分たちと将来に亘る懸念の解にもなっている。
結論(ネタバレ)を急ぐと、戦時中の1940年体制である「革新官僚」(岸信介、椎名悦三郎ら)が、1990年代半ばまでの輝かしい日本経済をかたどった、というストーリーだ。阪急の礎を作った小林一三が岸信介らを”アカ”呼ばわりした、という点がそのままアベノミクスの目くらましとなっている。そしてこのグラフな生々しい。大きくへこんだ景気を戦争で取り返していることが明らかだからだ。
戦後ずたずたになった経済を傾斜生産方式(大きな政府)でインフレを作り、官僚がドッジラインやシャウプ勧告を巧みに潜り抜けたことを知る。その後の高度成長(1960-1970)は、日本が農業から工業にシフトしてゆく過程で劇的な人口増加による都市化が進む。工業化の急成長は日本型垂直統合組織と中国が鎖国状態だったことで成功する。これらはいわば社会主義的な政策だったことはよく知られることだ。
その後ニクソンショック、石油ショックを乗り越え、黄金の80年代が始まるのだが、プラザ合意を機に極端な円高が進み、サッチャー、レーガン、中曽根(国鉄、電電公社、日本専売公社の民営化)の自由主義経済が広がり、ベルリンの壁とソ連が解体された傍らで、日本はバブル景気に浮く。バブルと言われたのはのちの話しであって、当時自分たちがバブルのただなかにいることに気づいていない。
フィリップス曲線が通じないスタグフレーションという聞きなれない言葉を聞いたのもこの頃だ。
1990年以降は世界のIT化が進む中で、日本はいまだ1940年体制に固執して大幅に乗り遅れる。世界は日本を置き去りにして、日本にとって大逆風の時代がやってくる。
アベノミクスが「戦後レジームからの脱却」と言っているのは大嘘で、実は「戦後レジームへの執着」で、相も変わらず補助金をばらまいたり、金利をマイナスにして貨幣を市場にざぶざぶ供給しているのだ。
野口先生は、1990年代以降、バブル期の幻影を追い、円高や株価に一喜一憂する日本人の姿勢を憂慮している。「豊かになるにはまじめに働くしかない。」というのが野口先生の結論だ。働かずして株価や土地や円高などの不労所得だけで生きてゆくことはできないのだ。
当たり前のこととはいえ、衝撃的な内容だった。
心に残る名著。
多くの方に読んでほしい素晴らしい著書であった。
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