エッセイは嫌いだ。

その場その項で得心しても心の底には残らない。所詮雑誌の一部である。新聞も読まずテレビも見ない者にこのような俗世間の先端が話題になってもシンクロしない。

さらに！

林真理子さんの本をかつて読んだことがない。ＮＨＫの『西郷どん』も一度として見なかった。

ところがである。

試験も終わりまた来年も同じ勉強をするハメになった途端、拍子抜けしたように自堕落な生活が待っていて、それではいけないと思い、ロシア文学かシェイクスピアでも読もうと書店に寄って買った本がこれだった。

それでも読み始めるとそれなりに面白い。面白いというかおもわずうなずくというか、まぁそんな感じだ。

このころにちょうど東日本大震災があった時期で、著名人としての対応に苦慮している姿が書かれている。ようするに林さんは、世間体をそれなりに気にする方であって、それでもやはり自分なりの考えがある方であることがわかった。

震災のエピソードも刺激的で、藤原和博氏のお話として、仮設住宅に７００人分の物資を寄付したら「うちは８００人だ！」といって返品されたというお話が印象的だった。混乱（カオス）の中で何が判断基準かすらもわからず、破綻する人間関係が伝わるエピソードである。