黒澤明監督の『素晴らしき日曜日』が記事になっていた。1947年からすると物価は概ね100倍だそうだ。映画で出てくる二人の所持金35円は今だと3,500円。格安の建売り住宅10万円はとてもじゃないが100倍どころでなないだろう。持ち家も夢のまた夢。映画の割引きも「夫婦50歳割引」を東宝がいち早く止めて、他の映画館も追随するようだ。どうやら「日曜日のインフレ」は、庶民のデフレ感覚を無視するつもりらしい。
休日のデートを楽しもうと、人出で賑(にぎ)わう東京の街に恋人たちがやってくる。ところが懐は寂しい限り。2人合わせて35円しかない。さて1日どうやって過ごそう――。黒澤明監督初期の名作「素晴らしき日曜日」の冒頭である。戦後間もない1947年に公開された。

無題

▼劇中には、実に多くの物の値段が出てくる。2人の月給が合計1200円。一緒に暮らしたいのだが、6畳一間の家賃は600円もする。15坪の建て売りは10万円。貧しい彼らにはどちらも手が届かない。2円払って入った動物園で女が言う。「禽獣(きんじゅう)は幸せなり。すべて鳥獣(とりけもの)の世界にはインフレーションはあらざればなり

▼そう、当時は敗戦から始まった急激な物価高騰のまっただ中。映画が撮られた47年のインフレ率は125%という。若者が貧しいのは彼らのせいばかりではなかった。20年以上もデフレしか知らない私たちにはもはや想像が難しい。9年近く費やして2%のインフレ目標すら未達成。だが、今年は少し様相が変わりそうだ。

▼パン、コーヒー、冷凍食品、ハムやソーセージ。年初から食品の値上げが相次ぐ。先に物価が上がり始めた欧米は警戒を強めている。日本にも波は押し寄せるのか。このところ耳にするインフレの「良し悪(あ)し」も気になる。胸騒ぐのは未経験ゆえだろう。好景気の証しなら歓迎なのだが、どうか穏やかな訪れであることを。

2022年1月5日 日本経済新聞 春秋
映画の中で「今は現実的にならなきゃだめだ。夢で腹はふくれない」と男性の主人公が言うセリフがあるらしい。デフレ渦のインフレはまさにスタグフレーション。腹がふくれるという次元ではなく、飢えとの闘いだ。盲目の納豆売りなどはもう誰も相手にしなくなるのだろう。飢え死にジャパン。




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