今朝の日経春秋より。
永井荷風は浅草東洋館に北野武さんや渥美清さんらと並んで写真が飾られているほど、歓楽街の風俗と縁が深い。『濹東綺譚』は映画にもなったが、誰もがよむべき本だと思う。
今から100年前の正月、東京はどんな景色だったのか。大正11年(1922年)の永井荷風の日記によると、かなり厳しい寒波に見舞われていたようだ。「水道凍る」「数年来覚えしことなき寒なり」とある。目覚めると、部屋のなかの盆栽の土も凍っていたという。


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▼気ままな一人暮らしである。元日は未明のご帰宅で、正午までぐっすり眠る。年賀の来客もなく、コーヒーをいれてくつろぐ。2日は銀座の風月堂で昼食をとり、亡父の墓参りに。3日は自宅で読書三昧だ。とにかく寒い。しかし、4日も銀座の街をぶらつくのが、散歩好きなこの人らしい。「銀座通も人影なし」と記す。

▼年が改まった列島は、寒気の影響で平年を上回る積雪を記録した地域も。自宅でのんびり箱根駅伝のテレビ中継でも眺めていたいところだが、荷風先生にならい、きのう東京の街を歩いてみた。銀座には、歌舞伎座の新春興行を目当てに美しい和装の人びとが集い、華やいだ雰囲気である。百貨店の駐車場も混雑していた。


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▼JR四ツ谷駅前の教会には人びとの長い列があった。支援団体が生活困窮者へ弁当を配布しているのだ。紙おむつなどを受け取る若い女性の姿がみられた。世俗を離れ孤高の印象が強い荷風だが、日記を子細に読めば、盲目の納豆売りなど困難な境遇の人の生きざまも記録する。後世に伝えるべき今年の正月の景色である。

2022年1月4日 日本経済新聞 春秋より
四ツ谷の弁当や紙おむつ配布を政治家はどう見ているのか。どうやら彼ら(彼女ら)いまこの国が「盲目の納豆売り」であふれかえっていることにまだ気づいていないらしい。




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