クリムトの作品を間近で見るのはこれが初めてだ。
午前中に映画を見て、なんと私が財布、ダーリンが指輪を紛失する、という失態を重ねつつ、豊田市にある美術館に向かう。トリエンナーレも開催されている場所でもある。この谷口吉生氏が設計した素晴らしい美術館にまずは圧倒される。ノックダウンだ。葛西臨海公園以来のノックダウン。
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クリムトの作品群の一部ではあるものの、彼の残した作品の中心的なものを多数並べ、かつ彼の人生とその背景の美術史をうまく整理して紹介している。
彼がかなり若い頃から性への欲求を作品に展開していることがわかる作品もあった。初期作品で印象的な『踊り子』は、少女の横顔の美しさと細やかな髪の毛の光が印象的で、クリムトの少女に対する思いと狙いが伝わる。『レース襟をつけた少女の肖像』は、同じ少女を別の作家が描いているのだが、明らかにクリムトの作品にはエクスタシーが示される。

圧倒的だったのは『ベートーヴェン・フリーズ』だ。その前にウィーン大学の天井画に挑戦するはずだったクリムトは、『哲学』、『医学[1]、『法学』の分野を担当する予定が却下され、その反動がこの作品に示されたようだ。これも当時はかなり意見が分かれた大作のようだが、とても素晴らしい迫力のある作品であった。また返す返すもウィーン大学の作品が実現されなかったことを悔やむ。

彼のベースには常に女性が存在し、性に対する意欲的な姿勢が作品に反映されている。それはジャポニズムからの春画などのアイデアを踏まえながら進化した色使いなどでより広がりを見せるものであるが、罪深い人のサガを蛇に例えるなど、極めて内面的な誠実さを持った画家だったように思える。この繊細さは誤解をも生む。その狭間で彼は戦い続けたのではなかろうか。

彼の女性遍歴は、一度も結婚することなく10人以上の子供に恵まれたことで象徴される。
芸術家は時代を反映し、戦う存在でもある。それが如実に示される素晴らしい展示であった。




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